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『Outdoor』 連載バックナンバー | |||
◆ 番外編 大井川源流行〜ヤマトイワナを求めて〜の巻 ◆ 前回の源流行が不発だったので、すっかり意気消沈してしまったオイラ。そこで、今回は、敵を討つべく、本流を捨て、支流を攻めてみることにしたのだ。大井川源流の支流は昔から、一度は入ってみたかったので、今回、気合い十分な釣り坊主なのである。 当日、夕方に車止めまで来たオイラは、ヘッドライトを頼りに、ひたすら林道を歩く。予定では、5時間ほど歩くつもりだ。途中、地元ナンバーの車が数台道脇に止まってる。 「おや?」 ここは、規制区間のはず・・・。ちょっとした疑問とともに、歩を進めること数時間。ようやく、目指す沢に着いたときには、既に真夜中。 「どひゃー!歩いたーっ!」 すっかり疲れたけど、目指す沢に着いた興奮もあり、気持ちは高ぶっていた。 沢の状況は、普通の感じだ。水量も、程良くありそう。すぐにビバークの支度をして、寝袋に潜り込んだ。ビバークが大好きな僕は、ワクワクしながら、ウイスキーのふたを回す。 「明日は釣るぞーっ」 ウイスキーをちびちびやりながら、一人、ほくそえんでいた。 翌朝。6時に目を覚まし、テントから出ると、空は快晴。最高である。 「よっしゃ、いいぞー」 オイラは、すぐにテントをたたみ、昨日コンビニで買っておいた、いなり寿司をパクつく。気がはやっているので、コーヒーを沸かすのも惜しみ、早速、釣りの支度をして、沢に入っていった。 こうした、ヤブ釣りは慣れているので、ブッシュが多少あっても、平気である。しばらく沢を登ると、足元に、魚が走った。 「イワナだっ!!」 声に出して叫んだ。確かに、魚がいた。一気に、アドレナライズしたオイラは、いても立ってもいられず、早速、ロッドを取り出した。 「よしっ、釣るぞーっ!」 なにやら、得体の知れない予感に包まれながら、少し上の瀬に、12番のアントをキャストした。すると、なんと一発で出た。バックしフライをくわえて無念そうな表情でオイラをにらむ。イワナを見ると、白斑の薄い、ヤマトイワナだ。これは、大井川源流の、西俣、東俣で釣れる奴と全く同じだ。 ここらが、いつも、議論のでるところ。 確かに、数年前、山梨の釜無川で釣ったヤマトチャンは、全く白斑がなかった。しかし、北岳の麓、野呂川のイワナも、昔釣ったヤマトイワナには、白斑があった。今の、ニッコウイワナとのハイ・ブリッドほどじゃないけど、確かに白斑があったのだ。だから、これは、これで、大井川特有のヤマトイワナじゃないかと思う。昔から、僕にはそういう思いが強かった。今回は、最源流まで行って、それを確信したかった。 その後、気をよくした僕は、次々とイワナを抜き上げていった。まさに、入れ食い状態。この沢に入って、大正解だったのだ。フライこそ振りにくいけど、ボウ・アンド・アロウなるキャストで難なく釣れたし、実に良い沢だった。 結局5時間ほどで、25匹のイワナを釣った。もちろん、全部リリースしたけど、そのどれにも、白斑はあった。ここは、どう見ても、イワナを放流したとは思えない、沢の最源流である。 百歩譲って、下の方は、ハイ・ブリッドだとしても、途中かなり険しい滝を越えての釣りである。そうしたことを鑑みて、やはり、ここらのヤマトイワナには、多少なり、白斑はあるんだと、勝手に結論を出して、ニヤつくオイラ。大満足の思いとともに、山を下りてきたのだった。 今でも、こうした源流に行けば、良い釣りができることに安心もし、ヤマトイワナの原種に出会えた喜びは実に大きかった。やっぱ、大井川良いなぁ。 来月もまた来ちゃろ、と、女房殿の顔色をうかがうオイラであった。でも、帰ってきた夜は、足がつって大騒ぎだったことは、内緒である。
平成18(2006)年8月3〜4日 |
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