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 『Outdoor』 連載バックナンバー 
 

 ◆ 第13回 イカ臭車の秘密!?の巻 ◆

釣り坊主  アオリイカ、別名バショウイカ。この名前を聞くと僕の中の釣り師の血が騒ぐのだ。今までいろんな釣りをしてきたけど、面白さという点ではベスト3に入るくらい楽しい釣りである。

 6月に入り、梅雨の声を聞く頃になるとコイツが防波堤からボツボツ釣れ出すのである。僕はアユをやらないので、もっぱらこの時期はイカ釣り専門になる。そして女房が僕の車に乗るのを嫌がるのもこの時期である。とにかくクサイのだ、車が。

 僕の車は総じて一年中サカナ臭かったり、クロダイのコマセがこぼれて異様な臭いを発したりと、とってもフレグランスなんだけど、この時期特にクサイらしい。らしいというのは、どうも僕はこれらのかほりに小さい頃から親しんできたせいか、ちっともクサイと思わない。むしろイイ匂いと思っちゃう。同級生に魚屋の息子がいるけど、そいつも同じ様なことを言ってたっけ。 で、なんでそんなにクサクなるかというと、実はアオリイカがたくさん釣れることに起因してるみたい。

 僕は総じて一年中おサカナが釣れないんだけど、こと、この時期のアオリイカだけは釣れちゃうのである。でもって、釣れちゃうモンだから、いい気になってクーラーに入りきらないくらい釣っちゃう。クーラーが一杯になると後は適当に車の中に放り込む。何かビニールにでもくるめば良いんだけど、面倒臭いからついそのまま放り込んじゃう。

 クサイわけである。

 さて、アオリイカ釣りにとって、非常に重要な部分を占めるのがエサである。良く他の釣り人達は子アジを使ってるけど、僕は絶対ウグイを使うようにしている。昔は僕も子アジを使ってたんだけど、食いがいまいち。子アジは体側にゼイゴというかち部分があって、どうもそれがイカちゃんの口をチクチク刺激するのか食いが悪いのだ。そこでいろいろ試した結果、ウグイが一番ということを発見したのだ。大発見である。一度、ヤマメも試したことがあったけど、海水と水温の影響ですぐにヘタっちゃう。その点ウグイは海水にも強いし、水温にも対応力があるので、とにかく強いのだ。入れて30分は元気。30分あればイカ釣りには充分である。

 そのウグイは幸いにも家の周りの川でいくらでも釣れちゃう。それこそ1時間あれば10匹は堅い。しかし昼間何かと忙しい僕にとって、このウグイを釣るという行為が結構めんどくさい。そこで、コヤツの登場である。

 「師匠、見て下さいよー。大漁っすよー、大漁」

 釣り弟子の佐藤君が活かしビクを持って、駆け込んできた。うーん、ウグイを喜んで釣ってきてくれるコヤツは、実に貴重な存在である。

 「さぁ、師匠、エサの準備はバッチシっすよ。早く行きましょう」
 「よっしゃ、行くか」

 かくして、今年最初のイカ釣りと相成ったのだ。

 グヒヒの大爆釣!

 「イヤー師匠、一年ぶりで腕が鳴りますねー」
 「そうか、一年ぶりかー、そういえば君もこのイカ釣りに限っては成績イイからなぁ」
 「へへへ、なんかちょっと引っかかりますけど、そうなんすよねー」

 去年のことである。やはりこのコンビでイカ釣りに行ったときに、コヤツはナント一晩に7杯のイカを釣ったのだ。しかもその内2杯は2キロオーバー。もう、暫く吹かれまくったモンなぁ。そんなことを思い出していたら、由比漁港に到着した。まずイカといったら僕らが最初に来るポイントである。海の様子を伺うと、風もなく穏やかな感じ。釣り人はと見ると、アジ釣りらしき人が2、3人いるだけであった。 ムヒヒである。二人でニヤニヤしながら道具を担いで防波堤の先端に陣取った。ガス・ランタンに灯をともして戦闘開始だ。仕掛けを道イトに結んで、鼻管をウグイの鼻に通した。ウグイは至って元気。すべてはこのウグイちゃんに掛かっているのだ。

 電気ウキに電池を入れ、明かりをともしていざ投入である。僕はいつも2本出しでやるので、一本は50メートル、もう一本は30メートルをメドに投げ入れた。佐藤君は一本竿で勝負だ。 潮が上げ潮なので、ゆっくりと右から動いている。潮加減もグーだ。あんまり潮が早すぎても来ないし、かといって、潮が止まっても食いが悪いので、今が絶好のチャンスである。

 仕掛けを入れてほんの2、3分たったときだ。手前のウキに変化が出た。急に激しく左右に動き出したのだ。

 イカに追われてるな。これでウキが一気に消し込んだらアワセである。竿を手に持ち、構えていると、スッとウキが水中に消えた。

 「いまだっ!!」

 竿を一気にあおった。その瞬間4号の竿が手元からしなった。

「キタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!」

 ずしんと重い、アオリイカ特有の引きが手に伝わった。

 「師匠、どうっすかー」
 「おうっ、結構でかそうだ」

 小さかった。期待に反してすぐに寄ってきた。佐藤君にネットを頼むと手際よく引き上げてくれた。上げてみると2キロには程遠い、500グラムくらいのヤツだった。しかし今年の初モノである。なんにしても嬉しいのだ。

 「師匠やりましたねー。幸先いいじゃないっすかー」
 「ウヒヒヒヒ」

 ニタニタしながらウグイを付け替えていたら、ナント今度は佐藤君に来ちゃった。ウグイをブクブクに戻してネットを手に駆けつけると、これが結構デカそうだ。佐藤君が唸りながら応戦している。

 「おい、緩めるなよ。緩めたらバレルぞ」
 「オッケイ、分かってます」

 ムム、珍しく余裕でやんの。やっぱ今までの実績がそうさせてるのかなぁ。感心してると、足元まで寄せてきた。顔を出して一発スミを吐かせてからネットに入れた。ネットを引き上げると結構重い。大物だ。

 「おい、佐藤君。でかいぞ」
 「ヒャッホー、やりー」

 防波堤上に上げられたイカを見ると、2キロ近い大物だった。20cm位のウグイの背中をバックシ食ってた。

 なぜかイカってヤツはいつもそうなんだけど、魚の背中からカブリつく。だから途中でバレて、ウグイの背中がガップリやられてたら間違いなくイカである。ところがたまにウグイがまっぷたつに食いちぎられてることがある。これはタチウオの仕業である。奴らはあたり構わず食いつくのだ。ジョーズみたいなもんである。しかし、嫌われ者のあちらと違い、僕も佐藤君もこのタチウオは大歓迎なのだ。なぜならイカの刺身もうまいけど、このタチウオの刺身もメチャうまなのである。だからこれが来たときは急遽仕掛けを変えてタチウオ釣りに変更である。小さめのウグイの背中にハリを通して、泳がせ釣りをするのだ。たまにメーター級のタチウオが釣れちゃうからやめられない。こんな素敵な外道も来るので、イカ釣りはホント楽しいのである。

 さて、この日は久々のイカ釣りということでツキがたまっていたのか、それからもガンガン来た。潮が止まってからもお構いなしに来た。いつもそうなんだけど、この釣りは釣れ出すとアッという間にクーラー一杯になっちゃう。嬉しい悲鳴である。

 いつしかウグイも底を突いてきた。そんなときである。佐藤君に例の一発が来た。

 「おーっと、師匠きましたよー」

 見ると佐藤君の仕掛けの先に、尻尾だけのウグイがぶら下がっていた。

 「よっしゃ、かえよう」

 急遽一本の竿を引き上げて、タチウオバージョンの仕掛けに変更した。しかしブクブクを見ると、ウグイはあと2匹。ルアーでもあればジグで対応できるんだけど、今日は置いてきてしまったのだ。とりあえず仲良く一匹ずつわけあった。

 佐藤君が今やられたポイントに投入。僕はそれより内側に入れてみた。魚が寄っていたのか、入れてすぐに来た。ほとんど二人同時だった。

 「やっほー」

 佐藤君が吠えながらやりとりしている。余裕である。僕も負けじと余裕をかましながら応戦した。

 結局上げてみると、どちらも70cmクラス。刺身にはイマイチ小さいサイズだ。煮込み用に佐藤君にあげた。

 さて、竿をしまってクーラーの中の釣果を確認すると、アオリイカが10杯、タチウオが2匹という結果だった。大漁である。ウハハなのだ。今シーズンの初釣りとしては、大満足の釣果である。

 早速帰って冷蔵庫にしまい、次の日刺身で食べたイカのうまかったこと。あんまりうまいんでご飯を3杯も食べちゃったモンね。おまけに女房もスッゴク喜んでくれた。これがあるからどんなに車が臭くても我慢してもらえるのである。

 あー、ホント芸は身を助けるだよなぁ。坊主のくせに、とんだ芸を授けてくれた仏様に心から感謝しつつ、4杯目のご飯のおかわりをした。

(『Outdoor』 1999年4月号掲載)

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